120) お客様 [自伝本『私のこと』]
いよいよ、オープンの日。
最初のお客様は、義妹だった。
「Balance の一番最初の客になりたい。」 と言って
まだ、オープン日が決まっていないうちから 予約をしてくれていた。
SHIMA との約束では、お客様からの問い合わせがあれば
Balance のことを紹介してくれることになっていた。
特に宣伝や、こちらから連絡など しなかったので
初日は 知りあいがほとんどだったが、徐々に予約の電話が増えてきた。
考えてみると、私が勝手に一年間のブランクを決めたせいで
困っていたお客様も多かったのであろう・・・。
実は、そのブランク中に どうしても・・・という方がいて
わざわざ グランドプリンスホテル赤坂(通称 赤プリ)の一室をリザーブして
カットを依頼してきた50代の会社社長もいたのだ。
彼は、顔もハートも とてもハンサムな男性で
お客様として 長い付き合いだったため
プライベートでも 時々 食事をしたり、結婚の相談などもしていた。
待ち合わせは、ほとんど夜の10時すぎ。
まず、カットを済ませ、ホテルに迷惑がかからないように掃除をし
決まって彼は、ルーム・サービスを頼む。
しかも、イチゴ・ショートケーキをだ。
アルコールは 一切飲めず、かなりの甘党なのだ。
代わりに 私は、冷蔵庫の缶ビールを頂く・・・。
なんとも 妙な光景である。
他にも、ブランク中に ブライダルのヘアーメイクを頼まれたり
カットやパーマのオーダーを、自宅に出向いてやってあげた方もいた。
これからの集客をどう考えていこうかと思っていた。
お店がオープンした頃、時代は 【癒しの ○ ○ 】 とか 【隠れ家 ○ ○ 】 という
タイトルのついた雑誌が多くなり、TV などでも頻繁に使われた言葉だった。
まさに 私がイメージしていた言葉であり、そのため よく取材の依頼があった。
最初は うれしく思い 取材を受けていたが、ちょっと考えてみた。
≪癒し系隠れ家サロンが、バリバリ宣伝していたら ダメでしょ ! ≫
もっとも、もともと宣伝で増えてくる新規のお客様 というより
固定客の口コミで紹介された新規のお客様が増えることを 目標にしていたのだ。
取材の依頼は 有難かったが、これ以来 丁重に説明し お断りしている。
まるで 私は “曲げられない女” であるし
経営者としては いかがなものかと思うのだが
癒し系隠れ家サロンのイメージを守ることと
宣伝に頼らず、私もスタッフも 自分の力だけで勝負しよう ! という
気合いとプライドを感じていた。
ただ、コンセプトがどうあれ 一人一人のお客様を大切にすることには 変わりない。
今まで以上に、来ていただくことの有難さを痛感していたのであった。
2010年02月05日(金)