52) Rh− [自伝本『私のこと』]
5才年上の兄が就職した頃、社内で健康診断や献血があった。
ある日の夕方、一通の分厚い封筒が 日本赤十字から届いた。
私は、まだ高3だったから 家にいて その封筒を開けるところも見ている。
急に 兄が、「え゛−−−っ ! 」 と 泣きそうな声で叫んだ。
手紙のような紙を持つ手が震えている。
なんと 兄は、Rh−AB型 という血液型だった。
彼は、もともと AB型ということは知っていたが
Rh−とは この時 初めて知ったのである。
その当時、「赤いシリーズ」 という 人気TVドラマ(1975年〜1980年頃)で
山口百恵さん扮する少女 “幸子さん” が、白血病に侵され
しかも、血液型が Rh−だったりして・・・
私達 兄妹の頭の中には、Rh− = 死ぬかも?的なイメージがあった。
その日の夕食は、暗ーい雰囲気で・・・
父の一言は、「Rh−AB といっても 県内に1人や2人は いるだろ !? 」
あ゛− よけい暗くなる・・・。
母はというと、「そんなに すごい人を産んだ私は 一番すごいよね〜 ♪ 」 と
脳天気に いろんな角度から、兄の気分を逆なでする。
私は 何も言えなかった。
次の日の朝、どうやら眠れなかった様子の兄は
目を赤くはらせた顔で、「やっぱりバイク売る !! 」 と決断していた。
当時、HONDA の CB750F2 というバイクを乗っていた兄。
大事そうに いつもピカピカに磨いていたのに・・・。
しかも、白血病でもないから 事故を起こしても
血が止まらなくなるわけでもないのに・・・。
すっかり 気分は、悲劇のヒロイン “幸子さん” なわけだ。
ドラマでは 確か すごく大げさに
小さなキズでも血が止まらなくなり 死に至る・・・的な設定だったはずだ。
結局 兄は、バイクを売ってしまった。
その後、兄の仕事の都合で 南極へ2年・・・という話もあったが
この血液型のせいと 結婚の話も重なって、南極行きの話はなくなった。
そして 社内に偶然 Rh−AB型の後輩がいたらしく
お互い 肉親より濃い関係(?)を築いたのに
その後輩が退社した時は、心の中で大泣きしたに違いない。
その後 兄は、緊急手術などで 25才〜45才までの間
毎年 何度も 200ccの献血を続けていた。
かなり貢献したと思う。
でも この話は これで終わりでは なかったのである。
2009年05月23日(土)