年表

54) 変わらぬ味 [自伝本『私のこと』]

帰省した時、食べたくなるものといえば・・・。
 
真っ先に出てくる味、「青島食堂」 である。
 
私が子供の頃からある、老舗ラーメン店だ。
店名の由来は 定かではないが、店主の出身地名らしい。
よく家族で食べに行った。
 
まだ 一店舗しかなかった昔、小さな駅の近くにあり
狭くて 使い込んだ古い店内は、常連客でいっぱいになっていた。
 
店主のおやじさんは、とにかく すごい ヘビースモーカーで
なんと ! くわえ煙草でラーメンを作っていた。
子供ながらに、よく その長〜い灰が落ちないものだと感心していた。
ラーメンが出来上がり、「はいよ!」 の声と同時に 差し出されたラーメンの中に
おやじさんの親指が必ず入っている。
なみなみと注がれたスープの中に、どんぶりを持つ指が入り込んでいるのだった。
さらに 子供ながらに、熱くないのか 不思議になりながら
ふやけきった 職業病のような その指を見つめたものだった。
 
昔は、おつまみチャーシューがあり
父は よく それで一杯やっていた。
おやじさんにも一杯! と差し出すと
待ってました ♪ と ばかり 笑顔になっていたのを覚えている。
 
今でも メニューは、ラーメンとチャーシューメンの並・大盛と単純だ。
味は 濃厚しょう油味で、くせになる ザ・ラーメンだと思う。
チャーシューも 形がバラバラで薄くてやわらかく、何とも言えぬ甘さがある。
それと、昔には無かったトッピングの増量が選べる。
ネギ・のり・ホウレン草 などだ。
 
まだ ラーメンブームなど無かった頃(私が小学生くらいの頃)
“日本一 麺がはけた店” で 新聞にも載ったらしい。
今は もう 亡くなってしまった あの有名店主のインパクトと
それに見合う こだわりの味が そうさせたのだと思う。
 
私も 今まで いろんな美味しいラーメンを食べては、感動するが
青島食堂のラーメンは、原点であって 別格なのである。
 
帰省する喜びを2倍、3倍にもしてくれる あのラーメンの味・・・。
何があっても 変わらぬものであって欲しいと願うだけである。
 
 
 

2009年05月29日(金)

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