5) 保育園 [自伝本『私のこと』]
共働きの両親だったこともあり、私は近くの保育園に通っていた。
覚えていることは、保育士の顔と名前・・・そして
ある年の冬、長テーブルに皆で おやつを食べている時のこと。
お友達の一人が 鼻血を出し、何人かの保育士が急いで駆けつけた。
私も見に行こうと走りだした・・・その時、足がからんで転んだ。
しかも、長テーブルと合体するかのように 額の右側をテーブルの角に滑らせながら・・・。
その額は ぱっくりと割れて、暖かいモノが目の中に入ってきた。
近くにいた お友達が 私の顔を見るなり
「せんせー! じゅんこちゃんの顔がーー !! 」 と 叫んでくれた。
すると、さっきの何人かの保育士が、今度は私の方に突進してきたのだ。
私は ≪鼻血の子に勝った!≫ とばかりに 初めての優越感を覚えた。
その後は、園長先生のお部屋に入れてもらい、再び優越感を得た。
なぜなら その当時、園長室という所は 園児にとって とてつもなく大人っぽい空間
そして、なかなか中を覗けない興味深い所だった。
怪我の痛みは さほど覚えていないが、うれしかった その気持ちは よーく覚えている。
それから しばらくして、父が迎えに来てくれた。
近くの病院で、7針くらい縫ってもらった。
ホチキスのような器具で カチンカチンと縫われたが、
園児にとっては まるでお医者さんごっこのようで、心惹かれたのだった。
これは、今もある 私の初めての優越感を勝ち取った 勲章のような傷 である。
2008年11月26日(水)