ある日、いつものように店長に指名され
フリーのお客様(誰の紹介でもなく初めて来店されたお客様)に入客した。
　
とっても可愛い学生風の方だった。
頭や顔は小さく、大きな丸い目にショートカットがとても似合っていた。
　
会話もはずみ、私のカットも気に入ってくれた。
これからタレントとしてデビューするのだと言う。
　
彼女の名は、つみき みほ。
　
後日、彼女が雑誌の取材を受けるため
私にヘアーの担当をして欲しいと依頼があった。
　
雑誌の名は、｢ an an ｣。
　
しかも、ヘアー特集で “つみき みほ のショートスタイル” のようなタイトルだった。
　
ヘアー担当者として、私は取材を受けた。
初めての一般雑誌の取材だったが
以前、業界誌の取材を受けていたため 少しも緊張しなかった。
　
この特集が評判になり、雑誌を見た方から指名が増えた。
それより 何より嬉しかったのは
両親に、有名な美容師になる ! と言って上京したこと・・・。
雑誌に出たいと言って SHIMA に入社したこと・・・。
まず一つ、夢が叶ったことが うれしかった。
　
雑誌に私の名前が載ったこと。
両親に対して、一番わかりやすい説得力のあるアピールだった。
　
だが、幸先(さいさき)の良い私に対して
両親の想いは、また一つ 私に試練の場を与えるのであった。