102) 試練 [自伝本『私のこと』]
彼と付き合い始めて 約3年・・・。 事件が起きた。
もともと 社内恋愛禁止という会社だったが
過去にも もちろん現在進行形としても、多数ある話だった。
私達も もう大人だし、仕事に支障をきたすようなことは一切なかった。
逆に、私は忙しすぎて 彼のことを考えている時間さえなかったくらいだった。
その頃、ディレクターという役職に さらに店長としての責任、
ショーや講習の出張、カット講師、教育全般、スタッフの悩み相談まで・・・
本来の美容師の仕事以外でも、昼 夜 休日なく 頭を働かせていた時期だった。
何となく 彼の様子が変だと気付いたのは
仕事で打ち合わせの時も 私を直視しないことだった。
でも、細かいことで いちいち反応している余裕もなく
ましてや、神経質に確認する行為などは 避けたかった。
心のどこかに モヤモヤしたものが残っていった。
事件が明るみになったのは、私が “ボウズ ” になった年の大晦日の夜。
私が 帰省するため、彼が 東京駅まで送ってくれた時のこと。
ついに 彼自身が暴露話のふたを開けてしまったのだった。
約1年間、彼は浮気をしていたそうだ。
丁度、私が断髪を決心しようとしていた頃からだったらしい。
私は、うすうす気付いていたような、でも知りたくなかったような・・・
そんな曖昧な自分に “ケリ” をつけたかった、という気分で髪を切ったのかもしれない。
彼の話を聞くうち、疑問が浮かび上がり 彼に聞いてみた。
一年間という時間は、浮気ではなく すでに本気なのでは ?
私が気付いていないのに、自分から過去を暴露する行為の裏には 何がある ?
自分はどうしたいの ? 私はどうすればいいの ?
彼の答えは・・・
もうすでに 彼女とは別れた、私に嘘をついていることが苦しくなった、
私とは別れたくない、ということだった。
普通なら 私の立場上、 「許せないー ! 」 とか 「裏切ったー ! 」 と
大騒ぎして 終止符を打つのだろうが、私は 自分の本音に気付いていた。
確かに 冷静ではいられない・・・ 涙も流れた。
でも、私は 以前と変わりなく、パートナーとして彼に近くにいて欲しかった。
二人は 考える時間が必要だった。
私なりに気付いたことがある。
実は、浮気された方も悪い。
気を使ってあげられなく、甘えてもいない、要は 魅力がなかったわけだ。
私が怠けていた時、浮気相手の彼女が 彼を救っていてくれたのかもしれない。
よくドラマなどである光景だが、決して誰か一人が悪いということではない。
逆に、別れ話に彼女がどれほど苦しんだろうか、なども考えた。
そして 私が 彼の変化に気付かなかったことも
彼にとっては 淋しいことだったのだろう。
さらに、私が男だったら・・・、と考えると
ある程度好きにさせて欲しいが、一番根っこの部分で尊敬し合っている・・・。
そんな関係がベストなんだろう。
この時、女としての私が思ったことは、
いざとなったら選んでもらえる女性に・・・
もしも結婚するなら、男を立ててあげられるような奥さんになりたい、と思った。
(今では あまり偉そうなことは言えないが・・・)
言葉で表すと、とても 私がものわかりの良い優等生に聞こえるが
感情的に即決せず、彼や彼女の立場になって考える時間があっただけだ。
実行出来るかどうかは これからである。
結論を出さないまま 半年が過ぎた頃
見える景色を広げるための貴重な時間をいただくことになるのであった。
2009年11月27日(金)