114) 一年間のブランク(後編) [自伝本『私のこと』]
出店するまでの間、フランスに出掛けた。
私の原点である長岡とは 正反対の・・・大都会パリを中心に
北のドーウ゛ィルまで 足を運んだ。
しかも、付き合っていた彼と彼の母親とである。
私の同期である彼の兄は、その頃 パリでヘアーの仕事をしていて
長男に会うために母親が企画したパリ行きに 私達が同行することとなったのだ。
まだ、結婚という言葉は お互い出ていなかったが
初めて 長い時間、彼の家族と一緒だったわけだ。
もちろん、私の目的は それだけではない。
出店に向けて 家具屋や雑貨屋など、自分のイメージに合うショップを回り歩いた。
あるアンティーク・ショップで、アール・デコの家具に惚れ込んだ。
彼は、 「まだ お店が決まっていないのだから、買うのはやめておいたら・・・」
と言うのだが、こういう出会いは 逃してはいけない気がして購入に踏み切った。
どんなお店であろうとも、結局 私が気に入るようなお店になるわけで
その箱に入る家具も、好きな物なら 絶対マッチするはずである。
アール・デコのレセプション・デスクをはじめ、アンティーク・ランプ、
シェルフ、チェアーなど、大きな家具を7点 購入した。
問題は、その家具をどうするか・・・ であった。
送り先は、まだ 未定なのだから・・・。
相手は フランス人、つたない私の英語力で 必死に説明。
すべてが決まるまで預かってもらい、連絡後 送ってもらえるかと聞いた。
何とか 事情をわかってもらったが、それを信用するかどうかだ。
日本人の感覚・常識で信頼しては 失敗することも よくある話である。
心配性の私だが、この時は 家具屋のおじさんを全面的に信頼し
メールで連絡を取り合うことにした。
それから あっという間に半年が過ぎ、ようやく出店のめどが立ち
あのおじさんに連絡、壊れないように しっかり梱包をお願いし
到着を待った。
丁度 内装も完了し、タイミング良く 私のお気に入り達が届いた。
心配していた梱包も、やりすぎでしょ ! というくらい厳重に包まれていて
解くのが大変なほどであった。
ようやく姿を現したお気に入り達を見た時、あのおじさんの顔を思い出した。
≪おじさん、ありがとう。 完璧でした。≫
もう、オープンしてから10年が過ぎてしまったが
このお気に入りの家具達を含め、全く飽きておらず
なかなか改装に至らないのであった。
2010年01月15日(金)