115) 結婚 [自伝本『私のこと』]
パリに出掛けた後、X'mas からお正月にかけて故郷の長岡へ帰省した。
出店に向けて 何も決まっていない私に対し
両親も心配を隠しきれない様子であった。
私なりに 見えない予定を話してはいたが
一番気がかりなことを 父が聞いてきた。
「おまえには ちゃんとしたパートナーはいないのか ? 」
“ちゃんとした” とは、結婚相手のことである。
付き合っている彼のことは 話してあったが、結婚の意思は伝えていなかった。
彼の気持ちは あれ以来、聞いてなかったし
ましてや 結婚とは・・・。
気がひけたのだが、元旦の夜 彼に連絡を取ってみた。
以外にも、彼は 父に会うことをすんなり承諾した。
早速、1月4日に わざわざ長岡まで挨拶に来てくれた。
彼を交えての 初の夕食・・・。
まるで ドラマの一コマだが、父が核心を衝いてきた。
こういう時、男同志は 独特の駆け引きをしているようであり
女達は、彼らが 何か変な事を言わないかと
意外と冷静に見ているのである。
「結婚したいと思っています。」
彼が、私にも まだ 言っていないことを話し始めた。
≪えーーー・・・ 順番が違うでしょう・・・≫
女達の気持ちは 完全に無視されたまま
勝手にいい気分で 飲み過ぎている男達・・・。
父も彼も 相当 アルコールは強い方であるが
こんな時は 止めるのも野暮なことである。
今まで 彼が酔っぱらうのを見たことのない私の前で
彼は 階段から転げ落ちたほど、父に “やっつけられた” のであった。
この勝負は、父の圧勝であった。
次の朝早く、両親は 私達の前に 冷えたビールを2本 持ってきた。
「朝からビール飲むと サッパリするから・・・。」 という母の あくまで自然なコメントに
「一生 忘れられない言葉だよ・・・。」 という彼の感想に苦笑した。
こうして、なんだか私達は 結婚することになったようだ。
後日、ある南青山のレストランに食事に出掛けた時
「じゃあ、結婚するってことで・・・。」 と言いながら
シャンパンで乾杯をしようとした彼に
「・・・出直して来い ! 」 と一言、シャンパンを一気飲みしたのである。
父に見せた態度とは裏腹に、その後も 気の利いたプロポーズの言葉はなく
両親を安心させるため、結納・入籍・結婚式 の日取りが決まっていったのであった。
2010年01月19日(火)