25) 雪 [自伝本『私のこと』]
新潟県の冬といえば “雪” だ。
特に 私の生まれ育った 長岡市は豪雪地帯である。
地球温暖化現象により、今では 降り始めの時期も遅く、降雪量も少なくなったが
私が子供の頃の冬は すごかった。
私のおじいちゃん・父 世代の習慣や工夫を紹介すると
?雪が降る前に、家のまわりを板と荒縄で “雪囲い” をする。
?真冬、足が埋もれて歩行困難な雪野原を “カンジキ” を履いて歩く。
昔は、竹や生の牛皮で 手作りしていた。
?雪国の道路は センターラインが やや高く、小さな穴がたくさん開いていて
消雪のため、ポンプで地下水をくみ上げ 水を出す “消雪道路”
?信号機が雪で隠れないように “縦型信号機”
?各家屋に必ずある “屋根へのハシゴ ”
など、たくさんあるが
もともと 家屋の構造自体、雪国ならではの工夫があるのだろうが
水気を多く含んだ雪の重さに つぶされないために
シーズンに何度も “雪下し” を しなければいけない。
男達の大事な冬仕事だった。
お隣近所、お互い 迷惑をかけないように 上手に雪の下ろし場所を確保するのだ。
昔からある 見えないルール、マナーのようなことである。
家々の屋根から下ろされた雪は
すっかり 2階から出入りできる位にまで積み上げられる。
道行く人が 2階にいる人と同じ高さを歩くのだ。
通常では ちょっと考え難い 雪国ならではの風景である。
子供にとっては、その下ろされた雪こそ 絶好の遊び道具だった。
春に近づく頃、前の晩に降った雪が 早朝 寒さで表面だけ凍る時がある。
“雪の氷” とでも言うのか、表面だけは 固い状態が出来上がる。
昔は “凍み渡り(しみわたり)” と言われたそうだ。
子供の重さなら 耐えられる様子だ。
朝、登校する時、踏み固められた歩道ではなく
まわりにある 誰の足跡もついていない 雪の氷の上を歩くのだ。
表面だけの固さなので、≪いつ 埋もれるか・・・≫ というスリルさえある。
途中、 「うわっ!」 と叫び、首まで一気に埋もれたこともある。
友達4〜5人がかりで 助け出されたりして、大いに盛り上がるのだ。
本当は ちょっと危ない遊びなのだが
この頃の子供達には、雪国ならではの “恵み” のような遊びであった。
近年、私は この時のような大雪を見ていない。
せいぜい スキー場くらいなものだ。
こんなところでも、地球温暖化現象が 手に取るようにわかる。
現実は 大変なのだが、風情(ふぜい)のある こんな光景を
雪国に取り戻したいものだ と 思ったりもするのだった。
2009年02月17日(火)